オジサン英語の進むべき道
娘がまだ中学3年生であった5年前のこと。うちの奥さんの古くからの友人でイギリス人のショーンが我が家へ遊びにきた。
彼は約3年毎にやって来る日本好きの外人だ。今回の訪問時に私は常々英単語の発音で疑問に思っていたことを彼にたずねてみた。
「color と collar という2つの単語は我々日本人にとって発音の違いを聞き分けるのがむつかしいが、あなた方英米人でも同様に聞き分けがむつかしいか?」
ご存知のように、日本語の母音はアイウエオの5種類しかないのに対し、英語の場合は数多くある。聞き慣れない日本人にとってそれらの類似した母音の発音は聞き取りにくいものである。[Λ]と[a]の母音はそのなかでも特に判別のつきにくいもののひとつであろう。ひょっとして英米人にとっても聞き取りにくいのではないかと、淡い期待を込めてこの質問をしてみたのだ。
彼の答えは期待に反して 「ノー」 であった。英米人にとって color と collar はまったく別の音に聞こえるので、聞き間違えることはまずないとのことであった。
さすが生(なま)外人。
ショーンに言わせると日本語の 「病院」 と 「美容院」 のようなものであるそうだ。彼は40歳から日本語を習い始めたが、何度聞いても 「ビョウイン」 と 「ビヨウイン」 は同じ音に聞こえるとのことであった。「『病院』と『美容院』を聞き間違える日本人はいないだろう?」と、ショーンは言った。なるほど、変に説得力のある説明に思わず納得してしまった。
そうこうするうちに、我々の会話にうちの奥さんと娘が参加してきた。そして遊びで発音のテストをやろうということになった。そこでざっと私の頭の中に浮かぶ以下の発音の紛らわしい英単語を書き出し、ショーンにテストしてもらった。
color/collar very/bury bad/bat
bed/bet cough/cuff cars/cards
thing/sing grass/glass heart/hurt
heard/hard years/ears lays/lathe
bag/back couch/coach clew/crew
thin/sin moss/moth thought/sought
lice/rice bed/bad Korea/career
luck/look food/hood month/months
テストのやり方は、ショーンに上記の紛らわしい対の単語のひとつだけを発音してもらい、どちらの単語を発音したのかを当てる方式を取った。
テスト結果はどうであったか。
私はかろうじて8割りの正解率だった。なんとか英検1級の面目を保てた気がした。英検2級半(1次のみ通過)の私の妻は正解率7割であった。最後に英検準2級の娘はどうであったか。娘の英語のレベルは妻より下であり、かつ彼女の知らないであろう単語も含まれていたので、正解率はせいぜい6割くらいかと思っていた。
ところが、
中学3年生の娘は全問正解であった。
全問正解どころかもっとすごいことに、彼女はショーンと同じように、 color と collar などの単語がまったく別の音に聞こえるとのことだ。
あたまがクラクラした。
よくよく娘の話を聞いてみると、当時娘は某私立中学へ通っていたのだが、その学校では中学1年から英語の授業に「英語音声学」というのがあって、生外人から徹底的に発音を矯正されるとのこと。だから[Λ]と[a] や [R]や[L]の違いは、まるで「病院」 と 「美容院」のごとく、自然に聞き分けられるようになったと言う。
私はその時まで、帰国子女は別にして、大多数の日本人は私と同じように、[Λ]と[a]、[R]と[L]等の紛らわしい発音の違いをはっきりと聞き取れないものと思い込んでいた。ところが今回のテストによって、私の認識はまったく間違っていたということを思い知らされた。世の中には娘のようにビミョーな英語の発音の違いを聞き取れる日本人が案外多数存在するのだ!!
まさに晴天の霹靂。
これまで中学生の娘に時々英語を教えてきた。その時、やけに娘の発音が外人ぽいなと思ってはいたが、個々の単語の発音の聞き取りは彼女のほうが数段上であったことにまったく気づかなかった……。
よく日本人の英語ができないのは学校の英語教育が悪いからだという批判があるが、そのような批判は今日の英語教育にはあてはまらないような気がする。
現在の中学、高校の英語の授業は我々の世代から比べると飛躍的に改善されており、また先生たちの英語の技量も確実に上がっているようだ。そのような恵まれた英語教育の下で、彼女たちのような中学生が日本中にぞくぞくと誕生している。これはすごいことだ。
後生おそるべし。
私のような昭和30年代生まれ、もしくはそれ以前のオジサン世代は、学生時代に英語の授業で「音声学」なるものはなかったし、また我々に英語を教えてくれた先生方の大半は本当の英語の発音を知らなかったと思う。彼らは戦争を体験している世代だけに、学生時代にまともな英語を学べる環境になかったのだから、当然といえば当然か。それに英語の授業をできる生外人もほとんどいなかった。生外人が英語の授業をするのに日本語がある程度話せなければならないが、我々の学生時代に日本語を話せる外人はなぜか関西弁のイーデスハンソンか、ディスクジョッキーのロイジェームスか、耳の動かせる変な外人のイーエッチエリックくらいしかいなかった。
ここまで私のブログを読んでくれた読者は、例外はあると思うが、おそらく大別して2つのグループに分かれていると思う。ひとつは私と同じように color/collar の違いを聞き取れないオジサングループ。もうひとつはいとも簡単に聞き取とることができる若い世代のグループだ。
もし、読者のなかに私と同じように color と collar の聞き分けができず、英語をある年代からあらたにはじめて資格を取ろうとされる方がいるのであれば、いろいろ異論はあろうが、あえて批判を恐れずに言おう。
オジサン族では私も含め、TOEICは残念ながら、高得点は望めないと思う。
なぜならば、TOEICは純粋な英語の技量を測るテストであり、単純な問題形式が多く、特にリスニング面ではこのような類似性のある発音の相違を問う問題が多く出題されるからだ。この部分では、帰国子女や音声学のような新しい英語教育を受けてきている若い世代には到底かなわない。
それでは我々オジサン族はどのような英語の道を歩くべきか。
それは英検1級である。
英検1級は、TOEIC と違い、論理性を求める試験である。書かれているものを読み理解する、書かれているものにかんして独自の意見を述べるといった形式の試験は、短に英語の技術だけではないので、我々オジサン族でも充分に到達可能だ。いやむしろこういった試験形式は人生経験を多く積んできている我々の方が有利な気もしてくる。
それでは我々オジサン族はその英検1級にどのようにアプローチするべきか。
次回、我々オジサン族が歩むべき英検1級合格の最善の方法を述べたいと思う。

こんにちは。ブログにおいでいただきありがとうございました。なるべく日々更新したいきたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。
投稿 『ほた』 | 2006年8月28日 (月) 06時44分
はじめまして
色々訪問していたら行き当たりました。
すごいですね!!
英検1級合格、おめでとうございます。
私は英語学校のスタッフをしていますが、
簡単な日常会話しか出来ません。
でもあきらめずに、外国人といつも接する機会があることを感謝し、頑張りたいと思っています。
私も年ですが、「オジサン」を見習って・・・。
投稿 417mariyo | 2006年8月28日 (月) 10時17分
ほたさん
コメントありがとうございます。また訪問させていただきます。
かいちゃん
投稿 かいちゃん | 2006年8月28日 (月) 19時57分
MARIYOさん
コメントありがとうございます。
ぜひ「オジサン英語クラブ」に入会下さい。入会費用は無料です。おばさんに達していなくても特例で認めます。
毎週日曜日に更新する予定です。今後ともよろしくお願いします。
かいちゃん
MARIYOさんのブログも訪問させていただきます。じゃね!
投稿 かいちゃん | 2006年8月28日 (月) 20時07分
こんばんは、さっそく遊びにきました!
かいちゃんさんのブログは説得感がめちゃあります!読んでいて、なるほど~と言うことが
多いです!
以前テレビで日本語と英語の発音の違いは、
かいちゃんさんがおっしゃっている通り、
母音を聞くか、子音を聞くかの違いだと言っていました。日本人は単語の母音の部分を強調して発音して、ネイティブは子音の部分を強調して発音するんですね。そのテレビを見て以来
自分が英語を話す時は、子音を強調して
話すようにしていますが、聞き取るのはなかなか難しいです、きっとかいちゃんさんの娘さんと同世代だと思いますが、私はオジサン族っぽいです、
と言うより、中高の英語の先生が完璧な日本語英語だったので影響されたのかな?
先生の影響ってすごいですね・・・
投稿 こーちぃ | 2006年8月29日 (火) 22時43分
こーちぃさん
訪問ありがとう。
そーだったんだ!今回のcolorとcollarの発音の質問は、ショーンだけでなく複数の生外人にしたのだけれど、彼らは全員母音を「あっさり」と発音するんだよね。強調しないんです。それが日本人にとってまた聞き取りにくくしているんです。そっかー、彼らは子音に重点を置いているんですね。僕なんか自分が母音を聞き取りにくいので、まるでカラオケで演歌を歌うみたいに思いっきり力を入れて母音を発音しちゃうんだよね。これじゃいけないんだ!参考になりました。今後は子音に注目します。
かいちゃん
投稿 かいちゃん | 2006年8月30日 (水) 20時26分
ショーンさんとは 普通に英語で会話しているのですよね?ということは 会話の流れでは
正しい発音が出来てるということではないでしょうか?
つまり TOEICでも 「どっちの単語を発音したでしょう~~」という問題は出ないので
あとは 文の中でどちらを使うと正解なのかが
理屈でわかれば おじさんでも おばさんでも
努力すれば なんとかなるんじゃないのかなあ・・と思ったんですけど。
それにしても 最近の中学には「音声学」まであるんですねえ。 さすがです!負けてはいられませんね。
投稿 megumi | 2006年8月31日 (木) 01時04分
MEGUMIさん
コメントありがとうございます。
ショーンとは実際は紙にcolorとcollarの文字を書いて、指差しながら話しました。
私は20年間英語を使って仕事をしてきましたが、判別のつきにくい単語の聞き取りを間違えてトラブルになったことは一度もありません。MEGUMIさんのおっしゃられるように状況から常識的に判断して推測できるからです。ところがTOEICの試験は短文のみが読まれるので、前後の状況がわからない場合があるのです。こんな正誤問題がありました。写真を見ながらリスニングをする問題で、写真は少年が釣りをしていて、釣った魚が草むらの中においてある情景です。テープで"ゼアリズフィッシュインザグラース"と英語が流れるのですが、当然素直なオジサンは、"There is fish in the grass."と思ってしまい、正と答えたのですが、実際のよまれた文章は"There is fish in the glass"で、誤が正しかったのです。TOEICは常識が通じないので、我々リスニング難民であるオジサン族には非常にやりにくい試験なのです。
投稿 かいちゃん | 2006年8月31日 (木) 17時40分
一気に一通り読ませていただきました。どれもすごく読み応えのある記事ですね!
私もTOEICで高得点が取れません。800点に届かず。。。でも、外国人相手の読む・書く・話す・聴くに特に不自由はないですし、海外生活の経験がないと言うと驚かれます。
たぶん l と r は聞き分けられていないと思いますが、実際のコミュニケーションにおいては、そこに必ず何らかの状況があるので color なのか collar 無意識に選別しているのだと思います。
通訳になったり留学したりするのでなければそれで十分かな~と思いますが、今は悲しいかなTOEICの点数で英語力を評価する風潮がすごく強いです。
投稿 あすくみ | 2006年10月27日 (金) 09時33分
あすくみさん
オジサンのブログへ訪問およびコメントありがとうございます。
本当にそうですよね。いまの風潮はTOEICの点数で英語力が評価される風潮にあります。
あすくみさんも実際に英語を使って仕事をされてるのでおわかりだと思いますが、実際の外人とコミュニケーションする場合にもっとも大切なことは、英語の技術ではないのです。相手の習慣、風習、宗教といった文化を理解してあげる思いやりがあって初めてスムーズなコミュニケーションができるのです。
オジサンの以前勤めていた会社の社長はインドから来たお客さんを焼肉屋に連れて行って接待したんですよ。最低な奴です(怒)!
投稿 かいちゃん | 2006年10月27日 (金) 22時33分